蹉跎分団 訓練

令和5年度前期 非常時参集訓練を実施しました。【連載シリーズ:班長】

非常時参集訓練

枚方市消防団では、令和5年度の枚方市消防団事業計画に基づき、大規模地震に迅速かつ的確に対応するために令和5年度前期非常時参集訓練を実施しました。

この非常時参集訓練は、令和5年6月11日(日)の午前9時頃、生駒断層帯でマグネチュード7.3の地震が発生し、枚方市全域で最大震度6強を観測したという想定で実施しました。

連載:最前線で奮闘するヒーローたち 【 班 長 】

非常時参集訓練で班長職の業務に就く蹉跎(さだ)分団 西川班長(右)とその補佐に就く溝口団員(左)

枚方市消防団広報部では、非常時参集訓練の訓練参加者にスポットを当て、その訓練参加者の担当部署における活動を『最前線で奮闘するヒーローたち』としてルポルタージュを行い、シリーズ連載していきます。

第一回となる今回の訓練では『班長職』にスポットを当て、蹉跎(さだ)分団 北中振班 班長 西川泰弘さんの活動に密着取材をしました。
想定に沿った班長職の業務をご覧ください。

地震発生前から車庫到着まで

新聞を読みながらくつろぐ西川班長

日曜日の朝、居間で新聞を読みながらくつろぐ西川班長
この直後に大きな地震が襲い掛かるとは知る由もありません。

突然の強い揺れに驚く西川班長

そして午前9時をまわった頃、突然下から突き上げる様な強い揺れを感じ、まずは自分の身を守る行動をとります。

机の下へ避難する西川班長

身を守るために机の下へ潜り込み、揺れがおさまるのを待ちます。
しばらくして地震の揺れがおさまれば、周囲の状況を確認し安全を確かめてから起き上がります。
その後すぐに家族の安否を確かめ、住居や近隣住宅等の目の届く範囲内で被害がないかも確かめます。

すぐさま消防団の活動着に着替える西川班長

家族や住居等に被害が及んでいない事が分かれば、すぐにテレビ・インターネット・ラジオ・防災無線等で地震の情報収集を行います。

そして震度5以上の地震が発生した事を認めたら、即座に枚方市消防団活動マニュアルに定める『市域で震度5以上を観測したときは、伝達は省略され、自動的に第2非常警備体制(2号参集)により全団員が指定場所に参集』の項目に則り、所属する蹉跎分団 北中振班の車庫へ急行します。

なお、管轄区域外からの参集については、分団指揮所もしくは最寄りの詰所・車庫に参集するものと定められています。

自宅から分団車庫まで、近隣の被害状況を確認しながら急行します

自宅を出るとき、引き続き起こり得る余震等の二次災害を未然に防ぐため、ガスの元栓を閉め、電気のブレーカーを「切」とします。

当訓練での参集は、原則徒歩または自転車となっており、参集途上でも地域の被害状況の把握や可能な限り人命救助に努める事を想定しています。

分団車庫内における被災状況の確認

車庫内で落下した額縁を拾い上げる溝口団員

西川班長より先行して分団車庫に到着した北中振班 溝口団員は、まずは車庫内部とその周辺を調査し「消防車両の運行が可能な状態なら、消防車を安全な位置まで移動させ稼働準備をする」という定めのもと、消防車を車庫から出庫させます。

そして揺れにより散乱した車庫内の資機材や備品等の整理整頓や整備を行い、来るべき出動に備えます。

消防車両の出庫および車庫付近の被災状況確認と報告

消防車を安全な位置まで移動させ、災害活動の準備に入る西川班長と溝口団員

分団車庫へ到着し、溝口団員と合流した西川班長は、すぐさま消防車に搭載されているMCA無線機と班長等の分団幹部が貸与を受けている特定小電力無線機の電源を立ち上げ、所属分団指揮所である蹉跎分団指揮所へMCA無線を使用して通信を試みます。(※1)

西川班長「訓練 訓練 北中振班西川から蹉跎分団詰所」

中尾分団長「蹉跎分団指揮所です。どうぞ。」

西川班長「北中振班西川は、現在時刻9時12分北中振班車庫に到着した。これより車庫内及び周辺の被害状況を調査する。以上、北中振班西川」

簡潔明瞭にMCA無線で初動に対する交信が行われたあと、すぐさま西川班長は、北中振班に所属する団員とその家族の安否確認を行う業務へ入ると同時に溝口団員へ車庫周辺の被害状況の確認を指示します。

中部方面本部に所属し枚方寝屋川消防組合中振出張所内に開設された蹉跎分団指揮所

その後すぐに分団指揮所より呼び出しがあり、即座に応答します。

中尾分団長「訓練 訓練 蹉跎分団指揮所から北中振班。」

西川班長「北中振班です、どうぞ。」

中尾分団長「蹉跎分団指揮所を中振出張所に開設した。北中振班は、車庫内及び周辺の被害状況及び、参集途上の道路障害、火災発生、建物倒壊等の情報を集約して蹉跎分団指揮所に報告することを指示する。以上、蹉跎分団指揮所。」

西川班長「北中振班、了解。」

改めて分団指揮所より被害状況等の確認指示と現状報告の指示を受けた西川班長は、溝口団員に班長業務の一部を委託するために特定小電力無線機を引き渡し、溝口団員は既に判明している情報と新しい情報を遂次、蹉跎分団指揮所の渡邊副分団長へ報告します。

溝口団員「訓練 訓練 北中振班溝口から蹉跎分団指揮所。」

渡邊副分団長「蹉跎分団指揮所です、どうぞ。」

溝口団員「車庫は、飾られていた額縁が落下している程度で機械器具等に異状なし。なお北中振3丁目付近で火災が2件発生、現在常備消防が活動中。国道170号線の中振交差点北側に面する建物が崩落し片側一車線が通行不能。以上、北中振班溝口、終わり。」

渡邊副分団長「蹉跎分団指揮所、了解。」

本番さながらに想定される被害状況を報告していきます。

所属団員の安否確認

西川班長は、溝口団員に周辺の被害状況の確認と蹉跎分団指揮所への報告を指示したあと、自ら北中振班の所属団員へ本人と家族の安否確認を行います。

蹉跎分団では、非常時参集訓練毎に異なる通信方法(電話・Eメール・メッセージアプリ等)を用いる事を団員へ指示して複数の手段を準備することで、災害時における通信の脆弱性を補完して強固とする試みを行なっております。

今回の訓練では、メッセージアプリの活用を所属団員へ指示しており、地震災害の発災を感知した所属団員の多くは、迅速に班長までメッセージアプリを用いて報告を行いますが、報告がなされない団員や被災により異常をきたしている団員へは、班長自ら団員の携帯電話や自宅の固定電話へ連絡を行い、状況の確認ならびに適切な指示を出します。

団員の安否情報を集約し、MCA無線で蹉跎分団指揮所へ報告します。

西川班長「訓練 訓練 北中振班から蹉跎分団指揮所。」

中尾分団長「蹉跎分団指揮所です、どうぞ。」

西川班長「先ほど指示を受けた北中振班の情報を報告する。北中振班の出動可能人員6名、その内連絡の取れた団員5名、取れなかった団員1名、消防車両の出動は可能。以上、北中振班。」

中尾分団長「蹉跎分団指揮所、了解。」

西川班長「なお連絡の取れなかった団員から報告があれば迅速に追報する。以上、北中振班、終わり。」

管轄区域のパトロール指令を受令

報告されてくる管轄区域内の被害状況を加味し指令内容を検討する森井部長と山本部長

蹉跎分団指揮所では、4班から報告を受けた被害状況を基に出動対応の重要性に付いて高い案件を考慮し、現場に最も近い位置で活動する団員・消防車へ救助やパトロール等の災害出動の指令を発令します。

中尾分団長「訓練 訓練 蹉跎分団指揮所から、北中振班。」

西川班長「北中振班です、どうぞ。」

中尾分団長「光善寺駅西側付近で家屋から発煙との情報があり、至急現場へ急行し、その状況を確認し報告せよ。」

西川班長「北中振班、了解。」

蹉跎分団指揮所から北中振班の消防車へ出動指令が発令されます。

パトロールへ出動

団員の安否確認と車庫周辺の被害状況の確認・報告が終われば、消防車に乗車しパトロールに出動します。

訓練では想定した事案を現場の団員へ指示し、その想定上の発生現場まで派遣し、実際に起きた時と同様に対応する訓練を行います。

枚方市消防団 蹉跎(さだ)分団

蹉跎分団北中振班車庫

今回、取材の対象になった枚方市消防団 蹉跎分団は、枚方市消防団の中でも一番南側に位置する分団であり、寝屋川市と高槻市に隣接するほか一級河川の淀川も管轄する分団です。

現在、中尾篤分団長以下33名の団員が所属し、走谷班、北中振班、南中振班、出口班の4班で管轄しています。

蹉跎分団に於ける非常時参集訓練に対する取り組みは、その都度異なる状況設定を行い、団員の各々が自ら状況に応じた柔軟な対応がとれる様に工夫がなされています。

今後の課題の一つとして「特定小電力無線機での送受信は地形上、不通となる箇所が点在しており、現在は携帯電話を併用するなど機宜の対応を行ってはいるが、無線設備の改善や中継を行う無線通信要員の配置など、様々な方法を検討して不具合、不都合等を改良していきたい。」と渡邊副分団長から話がありました。

枚方市消防団では、訓練内で判明した問題点は、真摯に向き合うと共に改良を重ね、将来に向けて遺憾なく防災力や消防力を発揮する事ができる体制づくりの構築を目指しております。

●令和4年度の非常時参集訓練の記事は、こちらをご覧下さい。

(※1)本文中に記載した無線の交信内容は、予め訓練用に設定された例文並びに記録を訓練の進行に照らし合わせて記載したものであり、実際に特定の相手方に対して行われた無線通信を無線通信設備等を用いて傍受し、その内容を転載したものでありません。

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