広報部 YouTube 訓練

令和5年度 中堅幹部教育訓練を実施しました。

中堅幹部教育訓練開式

中堅幹部教育訓練に参集した班長職以上の幹部団員

枚方市消防団では、令和5年5月14日(日)に枚方市出口にある枚方寝屋川消防組合土砂災害訓練場において、令和5年度 中堅幹部教育訓練を実施しました。

今回の訓練内容は、枚方市消防団初となる土砂災害対応訓練であり、近年の日本では、気象変動の影響による集中豪雨の発生頻度の増大、大規模地震発生の緊迫性の増大、更には活発な火山活動など、大規模な土砂災害を引き起こす要因の多様化、激甚化が懸念されており、今まさに全国各地で土砂災害が頻発し、多くの尊い命が失われています。

この様な現状を踏まえて、梅雨時期や台風シーズンを前に枚方市全域で、いつ土砂災害が発生しても枚方市消防団として即時に対応できるような実践的な土砂災害対応訓練を実施し、組織内の基本技術の向上を図るほか、幹部団員の資質や指導力向上も合わせて図る事を目的としております。

この中堅幹部教育訓練は、班長以上の階級者を対象に毎年課題を変えながら行われるもので、今回は100名近くの幹部団員が参加しました。

開式にあたり枚方市役所危機管理部長、枚方東消防署長、消防団長の挨拶を受けました。
その後、訓練を実施するにあたり「安全管理」についての説明を受け、指導員の指示のもと3班に分かれて訓練に臨みました。

訓練参加者へ安全管理の重要性を説く枚方東消防署警備課の安全管理担当者

特に今回の訓練は、ひとつ間違えると土砂の中に埋没しかねない危険性がある他、資機材や建設機械等との接触、下敷きなど、重大な事故の要因となる危険性が多いことから、安全管理については、枚方東消防署警備課の安全主任者や安全管理担当者のもと、厳格に実施されました。

訓練参加者は、脚絆(ゲートル)の代用として即席に使用することが出来る「養生テープ」を用いて足首に巻き付けました。
そして指示された個人装備品を装着・所持して各訓練場へ移動します。

安全管理についての講話を真剣に聞き入る訓練参加者

土砂災害訓練場

土砂災害訓練場は近年、枚方寝屋川消防組合によって新設された特設の訓練場であり、国内に於いても同様の土砂災害対応訓練施設が運用されている事例は多くなく、その中でも消防団組織が土砂災害対応訓練を実施できるのは、土砂災害訓練施設を保有する東京都や政令指定都市の消防本部(局)のみで、現在大阪府下にあっては、枚方市のほか、大阪市と堺市で運用されている3箇所と言われており、当該施設において消防団組織が訓練を行う事は非常に稀な事です。

今後、国内における消防団の土砂災害対応訓練の第一人者として、訓練事業拡大の牽引や先例として期待されるところであります。

同訓練施設は枚方市出口2丁目に設立され、模擬家屋土砂埋没救出訓練や各法の土砂埋没救出訓練に対応しており、ミニバックホーや各種資機材を配備し、柔軟に状況設定や復元が可能です。

ひとつの班の訓練が終了すれば、ミニバックホー等の資機材により設定の復元が行われます

今回の訓練では、模擬家屋土砂埋没救出訓練と土砂埋没救出訓練の一方掘り法と外掘り法の3つのパターンを設定しました。

模擬家屋土砂埋没救出訓練場では、2棟の家屋のうち1棟が完全に土砂に埋没、1棟は半分以上が土砂に埋没し、各々の家屋には15歳と5歳の男兄弟が取り残され、家屋外の土砂に親が埋没しているという設定で実施されました。

土砂埋没救出訓練では、一方掘り法と外掘り法各々1名づつ埋没している要救助者を救出するという設定がされました。

救出活動の基本と各訓練ごとの概要説明

各法を実践する前に指導員から概要説明を受け、その理解に努める訓練参加者

今回の訓練では3班に分かれ、3つの訓練をローテーションを行いながら実施しました。

第1班 枚方分団・蹉跎分団・川越分団・菅原分団

第2班 山田分団・殿一分団・氷室分団

第3班 殿二分団・樟葉分団・津田分団・女性分団

各訓練の前に枚方東消防署の指導員から、説明等の概要のほか、特性的に注意する点や安全管理について再徹底が行われました。

活動初期(要救助者発見から掘削活動まで)

家屋埋没救出訓練において検索活動を行う団員

検索活動により、要救助者(埋没者)の位置が特定された場合、または身体の一部が露出し、目視で確認できた要救助者に対して接触するまでの活動であり、当該事象に遭遇すれば、すぐさま周囲の状況を冷静に判断し、その状況に応じて自己確保を設定します。

グランドパット(コンパネ)を設定し救助を開始する団員

自己確保を設定したのち、活動スペースの確保かつ救助活動を行う者の荷重(土圧)を分散させるために、要救助者の周囲にコンパネ等のグランドパットを設定し救助活動にはいります。

迅速に胸部付近まで手掘りで土砂を除去

要救助者の一部が確認できる場合は、速やかに顔や胸部付近までの土砂を手掘りで掘削(くっさく)し、土砂による呼吸の抑制を取り除きます。

その後、状況に応じて両上肢がどのような状態にあるのかを確認もしくは推測し、救出時の掘削方法や掘削量の把握等に応じて救出プランを検討します。

掘削(くっさく)活動

手掘りによる掘削を行う団員

要救助者の呼吸確保、安全帯での確保が整い、埋没の状態を把握もしくは推測した上で救出プランをたて掘削を開始します。

要救助者の救出と搬出

指導に沿って片方の足の土砂を集中的に除去する団員

掘削や土留め板の設定により、要救助者の膝付近まで土砂排出が出来たとき、救助活動を行っている者は急いで足を引き抜こうとしてしまう事がありますが、膝下からの土圧は想像以上に掛かっており、容易に引き抜くことは出来ません。

この時、両足が揃って埋まっている状態であれば、片足を集中的に手掘りをして抜くことで、反対側の足も容易に抜ける場合があります。

コンパネを用いて傷病者を安全な場所まで搬送する団員

模擬家屋土砂埋没救出訓練

埋没家屋内からの救助

掘削により僅かな救出経路を確保し、埋没家屋内へ進入を試みます

この訓練は、家屋の裏山が土砂崩壊し、土石流で埋没してしまったという想定のものと、15歳の中学生(仮称:たかし君)と5歳の幼児(仮称:ひろし君)の男性兄弟が家屋内に取り残されているという設定で行われました。

家屋の1棟は大半が土砂に埋没しており、もう一方の家屋は半分以上が埋没しています。
各々の家屋に要救助者の兄弟に見立てた人形を配置し、その人形の救助にかかります。

現場の状況を確認し、安全を確保できるルートを選定した後、救助活動に取り掛かります。

大量の土砂が行く手を拒む中、救助を行う者自身の安全を保持し、土砂を取り除きながら要救助者の発見に努めます。
時に暗闇の土砂の中を這いつくばりながら前へ進みます。

要救助者を発見すると大きな声で呼び掛けを行い意識レベルの確認を行います。

『たかし君!!たかし君!!』『ひろし君!!ひろし君!!』

氏名が判明している時は、氏名を呼びます。
そして指導員より「意識あり」と想定の通告がされると、現場に居合わせた救助者は大きな声で要救助者を『ひろし君がんばれ!たかし君あともう少しだ!』など、励ましながら救助活動を継続します。

掘削した土砂を搬出

救助活動の最前線から排出された土砂は、バケツリレーに準じた人海戦術で効率よく後方へ送られ、活動の迅速化に貢献します。

それと同時にコンパネを用いて土砂搬出に従事する団員の足場整備を行い、安全の確保と作業の効率化を図ります。

屋外における埋没者の救助

土砂再流出の危険性を常に意識しながら救助活動を行います

この訓練でのもうひとつの設定が、家屋外で土砂に埋没した要救助者の救助を行うというものです。

救助活動を行う者は、土石流の再流出等の2次災害に警戒しながら、コンパネ等の救助資機材を柔軟に使用し、土圧や安息角に細心の注意を払って慎重に慎重を重ねて救助に努めます。

土圧(どあつ)とは?

土圧とは地中の構造物や埋没物が上下左右から受ける土の圧力です。

上記の訓練で解説すると埋没した要救助者に対し、周囲の土砂が水平方向にかかる圧力のことで、全方位から要救助者を圧迫し、深いところほど土圧は大きくなります。

安息角(あんそくかく)とは?

安息角とは土砂や砂などの堆積物が崩れないで安定しているときの斜面と水平面が成す最大角度を言います。

一般的な土の斜面では35度前後、水中では土の摩擦力が減少し、1~2度で滑り始める場合もあります。
それにより、砂質土や水分を多く含む土砂では安息角がさらに小さくなり、掘削した際に斜面の土が安定せず、土砂が深部へ流れ込む状態になります。

また、地盤を掘削した時の切土と土砂災害などで流れ出た土砂や盛り土でも安息角は異なり、後者の方が安息角は小さくなります。

なお、地盤工学でいう安息角は、砂などの粘着力がない土地の斜面が安定を保ちうる最も急な傾斜角を言うため、自然に存在する粘土を含む土や、水分を含む砂が作る傾斜角は、厳密な意味では安息角とはいえません。
しかし、消防機関が行う砂の掘削や移動を伴う訓練においては、砂が安定している角度を安息角と呼び習わしているので、枚方市消防団に於いても消防機関の慣例に従って『安息角』と表現し使用しています。

指揮者の実践的な訓練

現場の状況を冷静に見定め、的確な説明を行う枚方分団 南分団長

この模擬家屋土砂埋没救出訓練において、訓練班の班長や分団長が現場で指揮を執る訓練も行われ、現場状況の説明や救助活動の指示、安全行動の留意や突然の状況変化に対応する指揮等を想定のもとに行われました。

要救助者の搬送と医療

傷病者の頚椎(けいつい)を固定し、搬送要員の指揮をとる川越分団 寺久保分団長(写真中央)

要救助者の救出が完了すれば、外傷などを考慮し安全な場所まで移動させます。
土砂災害における要救助者は、土砂による衝撃、圧迫等により、埋没している部位の外傷や、胸骨圧迫による呼吸抑制を受けている可能性が高く『高リスク受傷機転』と判断してもよいとされています。

救助を行う者は、首から上が埋もれていない要救助者でも死に至るケースがあるため、積極的に常設消防機関の職員や医療従事者の助言を受け、傷病者に対する観察の基本手順に基づき、正しく初期評価を行い、その結果を周知させます。
特に注意すべき病態として「クラッシュ症候群」や「外傷性窒息」などがあります。

今回の訓練では指導員より『頚椎損傷あり』と想定の通告があり、すぐさま頭部の固定を行ったり、状況に応じて姿勢を変えるなどの機宜の処置を行いました。
そして、搬送中も絶え間なく要救助者へ呼び掛けを行い、要救助者に安心を与えます。

.

高リスク受傷機転とは?

高リスク受傷機転とは、車に轢かれた歩行者事故や高所からの墜落、体幹部の挟まりや機械器具に巻き込まれたなど、受傷機転から重症度、緊急度の高い外傷であると予測されるものを言います。

クラッシュ症候群とは?

クラッシュ症候群は、身体が長時間(概ね1時間以上)圧迫された場合、圧迫開放後に突然、心室細動が発生する症状です。

外傷性窒息とは?

胸部あるいは上腹部に持続的な圧迫が加わった場合に発生する窒息です。

肺挫創や肋骨骨折血気胸を伴うことが多いと言われていますが、早期に救出されれば予後は比較的良好とされています。

土砂埋没救出基本訓練・一方掘り法

写真右端に埋没している要救助者を先端にし、手掘り担当・掘削担当・流し担当の順で配置に就き、掘削した土砂を写真右側から左側に向けて排出します

一方掘り法とは、要救助者の直近で手掘りしている団員の後方団員は、要救助者との接触に注意しながら、シャベル等で積極的に掘削を行い、手掘りしている団員から出る土砂を排出しやすくするものです。

シャベルで掘削して出た土砂をさらに後方の団員へ流していきます。
流し団員と比べて、手掘り団員、掘削団員は体力を消耗するので、そのことを踏まえて配置場所のローテーションを実施します。

手掘り担当

手掘りを行う団員(要救助者直近の団員)は、基本的に手掘りによる救助を行います。
要救助者への影響がなければ、移植コテを使用する場合もあります。

掘削担当

掘削を行う団員(手掘り担当団員の後方の団員)は、手掘りを行う団員の土砂排出先の確保及び土圧の排除を目的とし、シャベルにより積極的な掘削と排出を行います。

流し担当

流しを行う団員(掘削を行う団員の後方の団員)は、排出された土砂を後方へ流します。
人員の確保が出来れば、流しを担当する団員を増やして土砂を離れた位置まで搬送を行います。

土砂埋没救出基本訓練・外掘り法

土留め板の設置

素早く土留め板を設置します。
30センチメートル程度は押す事が出来ます。
押した深さ分、土圧が緩和されるだけではなく、周囲で活動する救助者が及ぼす土圧も含めてシャットする事が出来ます。

掘削と増し打ち

土留め板の外側の土砂を、四方一気に掘削していきます。

並行して杭を外側だけに打ち、土留め板を支えます。
掘り下げた分、土留め板も増し打ちします。

土留め板と杭を外す

ある程度まで掘り下げれば、土留め板と杭を全て取り除きます。
そして要救助者の周囲の土砂だけが、そのままの状態で残ります。

均す(ならす)

残土土砂を崩しながら均します。
要救助者の膝下までがクリアになります。

救 出

救助者1~2名で、要救助者を支えて救出します。
無理に引き出さない様に、膝下の土を耕すように掘りながら進めます。

ドローンも運用

枚方寝屋川消防組合では、ドローンによる飛行訓練および空撮を行いました。

今後、枚方市消防団に於いてもドローン(飛行機材)を導入するとともに、操作研修会等へ積極的に参加を行い、災害現場や捜索現場、また各種訓練等で活用することが出来る様に、所属団員が「二等無人航空機操縦士」以上の国家資格取得が出来る支援態勢の構築を目指しております。

広報部の取材

広報部の専用撮影機材で撮影に臨む広報部員

広報部から正副団長を含む11名の広報部員が土砂災害対応訓練に参加し、うち2名は撮影専従として取材活動に従事しました。

広報部はホームページに関連する業務以外に活動マニュアルや各種資料等に使用するの写真や情報の収集、管理のほか、他の広報組織との連携を図っております。

また今回、枚方市長公室・広報プロモーション課からも取材を受け『広報 ひらかた 令和5年6月号 (No.1318)』の46頁に当訓練の概要が掲載されました。

中堅幹部教育訓練閉式

泥まみれになりながら閉会式に臨む訓練参加者

訓練閉式に際し、枚方寝屋川消防組合・枚方東消防署の山内副署長より訓練講評が行われました。

訓練講評に臨まれる枚方東消防署 山内副署長
山内副署長から訓練講評を受ける訓練参加者

訓練講評を受けたのち、警防訓練担当の吉水副団長から訓練完遂への労いの言葉と「わかれ」の号令を受け、無事に事故等もなく令和5年度の中堅幹部教育訓練が終了しました。

吉水副団長の号令により解散となりました

訓練参加者の声

訓練に参加した幹部団員の皆さん

今回、訓練に参加した幹部団員の皆さんからのを感想を一部紹介します。

山田分団 小出副分団長
今回初めて土砂災害を想定した訓練に参加しましたが、土砂埋没により身動きが取れない要救助者に対しての救出活動は思っていたよりもかなり重労働だと実感できました。

特に掘削活動では、要救助者周辺はシャベルなど使用すると要救助者に触れダメージを与える可能性があるため控えなければならず、ひたすら手掘りのみで行うため疲労で手が止まりそうになりましたし、足場の悪さもあり思っていたよりも進みませんでした。

今回、要救助者への対応方法や現況を活動を行う者全員に情報共有しておく事の重要さを学ぶ事ができました。

殿一分団 平田副分団長
枚方市消防団として初めて行われる訓練内容であり、訓練参加に際し事前学習を行い参加しましたが、当日の訓練時において、要救助者への声掛け、他の団員への情報共有、救助活動を行う団員の疲労度などの把握や交代指示等、まだまだ習得すべき内容が多いことがわかりました。

その内容については、早急に修正、習得し、いざという時に対応する事が出来るよう、他の団員と情報共有を図り、万一の災害時等に地域の皆様における「自助・共助・公助」に役立つことができるよう今後も訓練に励みます。

女性分団 幹部団員の皆さん
・家族が現場にいたら、性別、年齢、名前などを聞き全員に共有する事により、要救助者への声掛けで意識を確認したり励ましたりも出来る。
土砂に埋もれる前に居た場所を聞くことができると、掘削場所の特定ができ早期発見に繋がるので確認は必要だと感じた。
また、家族の方へも状況を伝えてあげると安心されるのではないかと思った。

・水を含んだ土砂は想像以上に重く、慣れないシャベルを使うのも難しかったので、まずは自分の安全を確保し、自分が無理なくできる事を判断して動くべきだと感じた。

・全体が救助活動に必死になると周りが見えなくなってしまい危険も増えるので、指揮命令系統を確立する事、そしてそれを全体に伝達する事が重要だと感じた。

・要救助者を傷つけないため、周りの土砂を手掘りで取り除くのが思った以上にきつく、早く救出してあげたい気持ちはあるのに、なかなか硬い土を手で取り除けない事が辛かった。

未曾有の土砂災害に対応するために

●当中堅幹部教育訓練の動画です。(音が出ます)

枚方市消防団では、今回の訓練で得た経験について、訓練参加者を通じ当該訓練に参加していない団員へ訓練内容について情報共有を行うとともに、万一の災害発生時においては、常設の消防機関である枚方寝屋川消防組合と共に救助活動を行えるよう、引き続き今回の訓練内容を含めた各種訓練を行い、今後も市民の皆様の安全・安心の確保が行えるように努めてまいります。

-広報部, YouTube, 訓練