枚方市消防団は、令和5年11月25日(土)と26日(日)の二日間で開催された、大阪府消防協会主催の令和5年度 消防団員ドローン操作研修に参加しました。
この研修は、消防団災害対応高度化推進事業の一環として行われたもので、大阪府下の消防団を対象に大阪府貝塚市にある貝塚市立ドローン・クリケットフィールドで開催され、枚方市消防団からは事前応募で参加の申し出を行った本部の上田団長、井上副団長のほか、枚方分団、津田分団、氷室分団、女性分団の団員、合わせて6名が参加しました。
こんにち、災害現場においてドローンの活用方に注目が集まっています。
電波を用いて遠隔操作による無人飛行が可能なドローンは、災害発生時には状況等の把握や収集活動に従事できるほか、救援活動や物品の輸送活動にも期待がもたれ、今後の災害現場における存在は大きな意義をもつものと思われます。
枚方市消防団では、この点に早期より着目し、今後の消防団活動とドローン運用の必要関係性について前向きに取り組んでおります。
目次
1日目
11月25日(土)の主な講習は、午前中に無人航空機の概論や法規、ドローンの構造・電波・バッテリーなどの構造上の仕組みのほか、気象・運用といった座学で講義を受け、午後からはドローンの基本操作と応用操作、日没時に業務用ドローンのデモフライト、日没後は夜間飛行の座学と実技講習のスケジュールで行われました。
操縦前の学科講習
座学では約2時間30分、無人飛行機の概論・法規やドローンの構造、電波、バッテリーのほか、気象や運用についての講義を受けます。
基本操縦訓練
ドローンの基本操作の講義では、8つの班に分かれて約2時間、離着陸、水平移動、旋回等の操作説明を受けます。
約2時間の基本操作の訓練を行なったのち、応用操作として、基本操作と同じく約2時間、対面飛行や8の字飛行、各飛行方の組合せを行いました。
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この講習に参加した団員の殆どは、ドローンの飛行操作経験がなく、当初は慣れない操作で四苦八苦しましたが、時間を重ねる毎に与えられた課題もクリア出来る様になりました。
ドローンはただ操作をして飛行させるだけではなく、操縦者は周囲の安全に配慮しなければなりません。
操作に集中しつつも安全を確保するという高い技量が求められます。
業務用ドローンの機能を披露
操作講習が終わると、デモフライトとして高機能を携えた業務用ドローンの機能が披露されました。
この業務用ドローンは、実技講習に使用された機体よりも大型で多彩な機能を有しており、受講生はインストラクターの説明を熱心に聞き入り、機体の多彩な動作に目を奪われました。
最初に披露されたのは、地上からの音声を電波を利用して機体へ送信し、機体に搭載されているスピーカーから音声を出力するもので、受講生は一様に「災害時には非常に有効な機能」と口々に話しておりました。
次に披露された機能は、事前に積載した荷物を空輸し、操縦者の任意の位置で荷物を投下するもので、人が立ち入る事が困難な場所への物資の輸送に大変有効な機能でした。
その他、飛行中の機体から伝送されてくる画像などの情報を機能ごとに説明がありました。
どの機能を持っても災害時には有効なものばかりであり、消防団員である受講生のドローンに寄せる期待は非常に大きいものがあります。
夜間飛行訓練
1日目の最後の訓練は、夜間飛行訓練です。
デモフライトのあと、一度教室へ戻り夜間飛行について講義を受けます。
夜間飛行についての特異点や危険性などの講義を受け、再び操作講習に臨みます。
昼間時とは視認性や距離感が大きく異なります。
機体の装備された灯火を視認しながら操作を行いますが、非常に高度な技量が求められます。
受講にあたり飛行限界点に誘導灯を持った者を配備し、その中で飛行訓練を行ないます。
操縦者は飛行限界点に到達していると思っていても実際は全く到達していなかったり、逆にまだまだ有効飛行範囲と思って操作していると、誘導灯を大きく振られ慌てて停止させる様な事もありました。
高度を高くあげる訓練では、機体の灯火を識別するのも困難を極めます。
機体を操作することで、機体の向きを把握し灯火を間違いなく認識し、操縦の確実性を高めます。
夜間は、機体の位置を目視で捉えるのが難しいだけではなく、鳥の存在などに気付き難くいなど、昼間時よりも難易度が非常に高いものである事を痛感しました。
●1日目の講習の様子です(音が出ます)
2日目
11月26日(日)の主な講習内容は、午前中に緊急時対応と運用ロールプレイングの実技講習、午後からは今後のトレーニング方法やケーススタディといった座学になります。
緊急時対応訓練
この日の最初の講習は、緊急時の対応として「あて舵」と「RTH」に付いてから始まります。
あて舵とは、進行する方向に対して反対方向に力を加える操作方法であり、予期せぬ突風等にも対処する事ができます。
RTHとは、Return to Homeの略で、自動的に機体を発着点まで帰還させる機能です。
この機能をマスターするには、注意事項や動作条件を操縦者が把握していなけらばならず、繰り返し訓練を行ないます。
運用ロールプレイング
緊急時対応講習のあとは、今回のドローン操作講習の総仕上げとなる運用ロールプレイングとして、GPSオフ飛行訓練や捜索訓練などが行われました。
GPSオフ訓練では、通常機体がGPSの位置情報を解析し、操作情報と連動して最善な動作を自動的に行っていますが、GPSの信号受信を途絶えさせると、機体は位置情報を失い、その時の気象条件に大きく左右される事となります。
少しの風にでも機体は影響を受け、風向きの沿って機体は流されて、ホバーリング(上空での静止態勢)を行う事が困難になります。
その状態で操縦者が緻密な操作を行う事により、GPSを使用した状態に近づける訓練が行われました。
捜索訓練では、機体のカメラから送られてくる画像を確認しながら、森林の中で救助を求める者を発見するという訓練で、操縦者と画像解析する者がバディとなり連携をとりながら行うものです。
操縦者が捜索ポイントまで機体を飛行させ、そこからはいちはやく要救助者を見つける為に、モニター担当者が細かな飛行指示(高度や位置など)を出します。
普段はあまり見る事のない「森」の真上を上空からモニターを介して見ると、まるで自分が鳥になったかの様な気持ちになりました。
この訓練では、ただ単に機体を操縦するのではなく、ドローンがもつ機能を最大限に発揮させるには、複数の要員が必要であるという事と要員同士が息のあった綿密な連携、そして必ずや要救助者を発見するという強い気持ちと集中力が必要である事を学びました。
実技講習後の実務講習
講習の最後となる講義は、座学により今後のトレーニング方法としてのケーススタディ、活用事例について学び、最後は質疑応答の機会を受けて講習会は閉講となりました。
講習修了者には、消防庁長官より修了証の交付が行われています。
今後のドローン運用と訓練
枚方市消防団では現在2機のドローン(DJI製 MINI 3 PRO)を導入し、今後災害時に於いて最大限の機能を発揮できる運用の構築を組織をあげて進めております。
今回の消防団員ドローン操作研修に参加した団員を枚方市消防団内のドローン操作指導担当者として定期的に飛行操作訓練を重ね、近い将来には「二等無人航空機操縦士」の国家資格の取得を目指すとともに、既に二等無人飛行機操縦士以上の資格を保有している団員や実務経験者、民間ドローンスクールでの講習を修了している団員にも協力を仰ぎ、枚方市消防団内でのドローン運用の周知と実働による活性化、操作技能の向上ならびに伝承を訓練を通して進めてまいります。
枚方市消防団の所属団員にあっては、枚方市消防団員応援のお店として、ドローンスクール『JUAVAC ドローンエキスパートアカデミー 大阪枚方校』様に御協力を頂いておりますので、資格取得等をお考えの方は是非ご利用下さい。
末筆となりましたが、今回の講習会取材にあたり、快く取材許可ならびに御協力を賜りました、大阪府消防協会、大阪府危機管理室、株式会社JDRONE・インストラクターの皆様、熊取町消防団、貝塚市消防団、羽曳野市消防団、岬町消防団をはじめとした消防団関係の皆様方には、この場をお借りしまして厚く御礼を申し上げます。
追記:
2023年3月31日をもって、上田団長は、任期を終え退団されました。
2024年4月1日より、中副団長が、枚方市消防団 団長に就任しました。