蹉跎分団 訓練

第69回 文化財防火デーに伴う消防訓練を光善寺で実施しました。

第69回 文化財防火デーに伴う消防訓練

令和5年1月21日(土)、枚方市出口2丁目に建立されている真宗大谷派 出口御坊淵埋山 光善寺において、第69回文化財防火デーに伴う消防訓練が実施されました。

光善寺本殿へ放水を行う蹉跎(さだ)分団の団員

この文化財防火デーに伴う消防訓練は、文化財を所有している対象物を再認識し、また文化財を火災から守るための防火推進運動として消防訓練を実施し、枚方市民の文化財保護意識と防火意識の高揚を図ることを目的としています。

消火訓練

指揮隊中隊長の号令により訓練が開始されました

枚方寝屋川消防組合枚方署1部指揮隊の中隊長により訓練開始の号令が発され、消防訓練が開始されます。

訓練は光善寺社務所内より出火したという想定で始まり、火災の発生を発見した御住職が消火器を用いて火元の初期消火を行うとともに、応援に駆け付けた関係者と近隣住民の皆さんへ、119番通報と避難誘導を依頼されました。

火災の発生を発見し、消火器で初期消火を行われる御住職

119番通報の依頼を受けられた近隣住民の方は、実際に119番通報(通報訓練)を行い、冷静に現状を報告されました。

火災通報を受けた消防指令センターの指令員は、すぐさま枚方署の1部指揮隊と中振消防小隊、枚方市消防団蹉跎(さだ)分団へ第一出動の指令を出します。

蹉跎分団が現場へ急行します

消防指令センターから『一般建物火災発生』の指令を受けた蹉跎分団の分団長と副分団長は、すぐさま団員へ火災発生の通告を行い、通告を受けた団員や火災を覚知した団員は迅速に消防団消防車庫へ参集し、装備や消防車等の出動態勢を整え、準備が出来た隊から火災現場へ急行します。

蹉跎分団が現場へ到着、迅速に消火活動に取り掛かります

火災現場へ到着後、現場の状況を冷静に判断し、安全を確保する準備を整え、その後すぐさま消火活動を行う態勢を敷きます。

小型消防車で現場へ駆けつけた4名の団員は、速やかに自分が担当する持ち場へ就き、筒先担当、筒先補助担当、機関担当、吸管担当の決められた役割に従って消火活動を開始します。

火炎が立ち昇る箇所へ的確に放水を行う団員

まずは放水により火の勢いを抑え、勢いが弱まった事を見計らい、光善寺本殿に祀られている「阿弥陀如来像」と「蓮如上人御木像」の御神仏に見立てた模造品を、枚方寝屋川消防組合の中振消防小隊と連携・協調をもって慎重に救出し、安全な場所へお運びします。

本殿内から御神仏の模造品を搬出する蹉跎分団と中振消防小隊

御神仏を安全な場所へお運びし、救出した団員の安全を確認した後は、再び放水の水圧を高めて本殿の延焼を止めるために最善を尽くします。

枚方寝屋川消防組合の消防隊は、広範囲に消火水を噴霧できる消防器具を使用し、延焼の拡大防止と人的被害の防止に全力を挙げます。

消防訓練を見守る光善寺保育園の皆さん

一連の動作を固唾と見守る地元光善寺保育園の皆さんからは、放水する様子や機敏な行動をとる消防団員や消防職員の姿を見て、拍手と歓声が上がりました。

鎮火報告を行う蹉跎分団 中尾分団長(銀色の防火衣)

その後、光善寺本殿の消火ならびに延焼防止完了と御神仏の保護、団員の安全を確認した蹉跎分団の中尾分団長は、現場指揮者である1部指揮隊の中隊長へ鎮火報告を行いました。

消火活動が終了し、中尾分団長は上田消防団長へ訓練終了の報告を行い、無事に文化財防火デーに伴う消防訓練は終了しました。

藤原住職へ敬礼を行う消防団員と消防職員

訓練閉式に先立ち、光善寺の藤原住職より御挨拶と御礼のお言葉を頂戴致しました。

訓練に参加した枚方市消防団蹉跎分団(右側の隊)、枚方寝屋川消防組合枚方消防署中振消防小隊(左側の隊)

今回、訓練参加した蹉跎分団の団員からは、通常の放水訓練では運動場や淀川河川敷の様な広い場所での訓練が多いのですが、今回はいつもと異なり、市指定の文化財という重要な建造物に対して、限られた小さな目標物へ的確に放水を行わなければならず、より慎重に、より精密に、かつ迅速さが求められる動作を緊張する中で訓練させていただけたことは、今後の火災等の消火任務に於いても役立てられるものと感じる事が出来ましたという感想が聞かれました。

また地域の方々や園児の皆さんに見て頂けたことにより、消防団活動の一端もご覧頂けたことも大変ありがたかったですと、ご声援を頂きましたご見学の皆様にも感謝しておりました。

消防体験会を開催

消防訓練のあと、消防車等を使い子どもさん向けの消火訓練を行いました

消防訓練が終了したのち、御住職の御厚意でそのまま境内を開放して頂き、消防車等を利用し子どもさん向けの消防体験会を行いました。

小さな子どもさんも消防車からの水で鐘楼(しょうろう)を守ります!

鐘楼(しょうろう)の前では、消防車と実際に火災現場で使用している資機材を用いて放水体験を行いました。

小さな子どもさんも放水を行っている時は、一様に真剣な眼差し!火災の恐ろしさと消火の大切さを理解されている事が伝わってきました。

「小さな子どもさんは、消火器を床へしっかりとおいて、レバーに体重を乗せて噴射させるんだよ~」と優しく説明する蹉跎分団の団員

訓練用水消火器の体験コーナーでは、消防団員も指導役として携わり、小さな子どもさんにも使い方を分かりやすく理解してもらえる様に説明を行いました。

普段からの自主防災訓練や学校での訓練の経験からか、消火器の使用方をよく理解されている方が多く、指導役も関心するぐらいの知識をお持ちの方がたくさんいらっしゃいました。

消防車の前でお姉ちゃんとハイチーズ!

枚方寝屋川消防組合の広報車「消太号」も登場し、子どもさん用の防火衣や制服を着用して記念撮影をして頂きました。

今回、ご参加・ご見学を頂いたお母さんと娘さんの親子からは、毎年合同消防出初式には観覧におもむき、第二部の市民の集いでは消防体験を楽しんでいますと嬉しいお言葉も頂きました。

貴重な文化財を後世へ残すために

枚方市消防団では、今後も積極的に文化財にかかわる消防訓練に取り組み、常設の消防機関である枚方寝屋川消防組合と連携を図ると共に市民の財産である文化財を火災から守る事に努め、文化財を後世へ残すために最善を尽くしてまいります。

また、市民の皆さんに「消防」を知って頂けるふれあいの場を積極的に設けて行きたいと考えております。

真宗大谷派 出口御坊淵埋山 光善寺

真宗大谷派 出口御坊淵埋山 光善寺本殿

枚方市出口地区は、文明7年(1475年)本願寺第八世蓮如上人(れんにょしょうにん)が建立した御坊(ごぼう)を中心に発達した寺内町(じないまち)です。

寺内町は、室町時代に浄土真宗などの仏教寺院、道場(御坊)を中心に形成された自治集落のことを言い、蓮如上人は御坊(のちの光善寺)を拠点に摂津・河内・和泉で布教活動を行い、三年後、山城に創建した山科本願寺に移りました。

蓮如上人の死後、光善寺は戦国乱世の中で退転を余儀なくなれ、旧地に復したのは慶長(けいちょう)年間(1596~1615年)でした。

広大な寺域と御堂(みどう)・山門・通用門・鐘楼(しょうろう)・太鼓楼(たいころう)・書院・庭園などの江戸時代の伽藍(がらん)を残し、寺内町の核としての風格を今に伝えています。
その景観は「河内名所図会(かわちめいしょずえ)」(享和元年刊)にみえるものとよく一致し、江戸後期にさかのぼるものであります。

伽藍の近世建築には、17世紀の山門および脇門、江戸中期の数寄屋風書院(すきやふうしょいん)があり、天明2年(1782年)の御堂、同7年の太鼓楼等があります。

光善寺のサイカチと龍女伝説

大阪府指定文化財(天然記念物)に指定されている光善寺のサイカチの木

サイカチは、マメ科の落葉高木(らくようこうぼく)で、幹・枝に多数の刺(とげ)があり、葉は複葉(ふくよう)、淡い黄緑色の小さな花が咲きます。

長さ30㎝余りの豆果(とうか)は、サポニンを含むため洗濯用の洗剤として用いたり、生薬(しょうやく)として去痰(きょたん)や利尿剤にも利用されました。

多数の刺(とげ)があるサイカチの枝

境内(けいだい)北端にあるサイカチは樹齢(じゅれい)200~250年、幹周り2.5ⅿ、樹高(じゅこう)12ⅿで、大阪府内では幹周り2ⅿをこえるものはほとんど見られません。
昭和50年(1975年)に、大阪府指定文化財(天然記念物)になりました。

また、平成25~27年(2013~2015年)には樹勢(じゅせい)回復のための治療が行われました。

龍女が蓮如上人に献上した池の一部と伝えられる境内の池

光善寺のサイカチには龍女(りゅうにょ)伝説があります。

室町時代、浄土真宗中興(ちゅうこう)の祖である蓮如上人が、出口で説法をしていた時、毎晩熱心に聴聞する美女がいました。
ある夜「私はこのあたりの大池に住む大蛇です。上人の説法により功徳を得て昇天できることになりました。
この池を上人に献上しますので、埋めたてて御堂(みどう)を建立(こんりゅう)して下さい。」と言って姿を消し、大池のそばのサイカチから昇天したといいます。

枚方市保存樹木 楠の大樹

枚方市の保存樹木に指定されているクスノキの大樹

光善寺の境内には、枚方市が保存樹木として指定したクスノキもあります。
このクスノキは、庭園の池の畔にそびえ立ち、あたかも光善寺をお守りしているかの様にみえます。

枚方市が保存樹木として昭和56年7月23日に指定(指定番号第16号)を行い、地域住民の貴重な財産として大切に保護されてきました。

大きさが圧倒するクスノキの根元

今回、枚方市消防団の光善寺 文化財防火デーに伴う消防訓練に於ける現場取材に関しまして、全面的なご協力、ご配慮を賜りました真宗大谷派 出口御坊淵埋山 光善寺の御住職様並びに関係者の皆様、取材に快く御協力を賜りました光善寺保育園の皆様、一般ご参加の市民の皆様、関係各位の皆様方には、この場をお借り致しまして厚く御礼を申し上げます。

-蹉跎分団, 訓練