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消防大学校 消防団活性化推進コース

(右から4人目が平田副分団長)
令和7年9月24日(水)から9月26日(金)までの3日間、東京都にある消防大学校にて開催された「危機管理・防災教育科消防団活性化推進コース(第18回)」へ、大阪府枚方市消防団より殿一分団平田副分団長を派遣しました。
消防大学校は、消防行政を所管する総務省が東京都調布市に設置し、消防吏員、消防団員、消防行政に携わる行政機関職員などの幹部に対し、幹部としての高度な教育訓練を行う研修機関です。

消防団活性化推進コースは、都道府県よりの推薦を受けた消防団中堅幹部団員を対象に3日間の研修が行われ、18回目を迎えた今回は福島県より2名、神奈川県より2名と大阪府より1名の5名が参加しました。
《1日目》消防団法制・消防団運営、リーダーシップ研修

研修1日目となる9月24日(金)は、開講式が行われた後に講義室での講義が行われ、1コマ目は「消防団を中核とした地域防災力の充実強化」をテーマとして消防庁国民保護・防災部 地域防災室 有村祐輝課長代理を講師にお迎えして消防団の現状、消防団員の処遇改善の推進、消防団の充実強化に向けた近年の主な取組等について講義が行われました。
2コマ目は「リーダーシップ」をテーマとして株式会社宙(sora) 代表取締役ビジネスコーチ 栗栖佳子氏を講師にお迎えして消防団という組織の特性から「地域や仲間を巻き込む共感型のリーダーシップ」が必要であり、「コーチング」について学びました。
「コーチング」の基本としての「聴くスキル」「伝えるスキル」「承認するスキル」について、受講した平田副分団長より、今後の地域防災や消防団活動において学んだ内容を活かした活動を継続したいとの話がありました。
《2日目》指揮訓練、消防団と地域防災

研修2日目となる9月25日(木)の講義は、1コマ目は「指揮訓練シミュレーション」をテーマとして消防大学校教務部 亀井達三教授を講師にお迎えして大規模災害発生時(応急活動)における「消防署と消防団の連携」と「連携に必要な対応・注意事項の確認」について、講義室にて状況付与型訓練(ロールプレイング方式)が行われました。

2コマ目は「消防団と地域防災」をテーマに山口大学大学院准教授 瀧本浩一氏と減災研究会代表 岩本憲治氏を講師にお迎えして災害図上DIG訓練、防災まち歩きとマップづくりおよび地域防災力の充実強化について講義室および消防大学校周辺地区にて訓練、講義が行われました。この訓練、講義については、消防大学校周辺地区の住宅地図を用いて「Disaster(災害)・Imagination(想像力)・Game(ゲーム)」訓練をした後に、実際にその場所にて徒歩による確認を行い、マップを作成しました。受講した平田副分団長より、地域防災において実際に歩いて危険個所を事前に確認し、生きたハザードマップを作成することは重要なことであり、今後、地域防災に活かしていきたいとの話がありました。
《3日目》消防団の災害対応事例とその後の対応、実火災体験型訓練、消防団実務管理

研修最終日となる9月26日(金)の講義は、1コマ目は「多重災害への備え」をテーマに石川県奥能登広域圏事務組合 谷内田隆浩輪島消防署長、「消防団ができること」をテーマに石川県輪島市消防団 山吹英雄団長を講師にお迎えして令和6年1月1日に発災した令和6年能登半島地震と同年9月21日から23日にかけて発災した令和6年能登半島豪雨時における常備消防と消防団が経験した内容について講義が行われました。



2コマ目は「危険物火災」をテーマに消防大学校大規模火災実験棟にて消防大学校警防担当教官および指導員による異常燃焼現象(スロップオーバー現象、ボイルオーバー現象)見取訓練、輻射熱体験訓練、拡散漏洩防止見取訓練が行われ、実際に安全を確保した上で燃焼実験を体験しました。
補足
<スロップオーバー現象>
原油の火災時において、油表面に放水が行われた場合、降雨があった場合、ときには泡消火が行われた場合等に、水分が表面近くの油層内で気化することにより、油が水と一緒に溢流する現象。
油が粘性を有し、沸点が水の沸点以上である場合に発生し得る。ボイルオーバーに比べれば穏やかな現象であるが、溢れ出た油がタンク周辺で燃えることから、火災が拡大することになる。 (令和7年9月26日実施消防団活性化コース第18回教育資料より)
<ボイルオーバー現象>
タンク火災などで油が燃えると、油面の直下は油が煮えたぎり、高温の層は次第に厚くなる一方で消火のために投入された泡消火剤(大部分が水)は泡がつぶれると油の下にたまっていく。燃えるに従って油面が下がっていくと、やがて煮えたぎった油と水が接触する高温の油層が厚くなっていると、水は瞬間的に蒸発し、燃えている油とともに爆発的に飛び散り、同時に火の着いた油が水蒸気と混合して膨れ上がり大量にあふれでる。 (令和7年9月26日実施消防団活性化コース第18回教育資料より)

3コマ目は「消防団実務管理」をテーマに消防大学校教務部 貴志健児教授を講師にお迎えして技能管理、安全管理、危機管理について実際に起こった事例を基に講義が行われました。この講義においては消防団活動における起こりやすい事故についても講義が行われました。
3日目の受講内容について、平田副分団長より消防団員として万一の大規模災害発災時において自身の今までの経験値では通用しないこと、地域住民に対し安否確認を行う重要性、平常時における予防活動、発災後の「記録」と「広報」が重要であること、現場の活動において「基本=安全管理の第一歩」として普段の訓練から「あたりまえのことをばかにしないでちゃんとできるようにする(ABCD)」ようにすることが大切であることを再認識する機会となりましたとの話がありました。
3日間の研修を終えて


大規模災害時において一番大切なこと、それはまず自らの安全を確保(自助)し、家族、近所の方々、地域の方々において互いに助け合う(共助)ことと考えます。
残念ながら、大規模災害が発生した場合には常備消防や消防団などの(公助)についてはすべての被災現場において対応することは難しいと考えます。
今回、消防大学校において様々なカリキュラムを体験させていただき自助、共助の大切さ、平常時における訓練や防災活動の重要性を改めて考えることができ、この体験を今後、市民の皆さまのお役にたつことができますよう、訓練、防災活動、救命講習活動、火災時における現場活動に活かすことができますよう一層消防団活動に励みたいと考えております。
最後になりましたが、派遣の機会を与えていただきました関係機関、関係者の皆さま、消防大学校教務部の神尾教官をはじめとするご指導をいただきました教官および事務担当の皆さま、一緒に研修を受講しました受講生の皆さま、そして普段より消防団活動にご理解、ご協力をいただいております地域の皆さまにこの場をお借りして改めてお礼申し上げます。
枚方市消防団殿一分団 副分団長 平田 浩嗣