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第1回企業訪問 (株)初田製作所
社 是 | 誠実と努力と根気を信条とし、堅実なる経営を通じて、優秀なる製品を市場に送り、社会公衆の利益向上に寄与する。 |
企業理念 | 「人命・財産・文化を火災から守る」 |
代表者名 | 代表取締役社長 初田和弘 |
創 業 | 明治35年(1902年)12月1日 |
会社設立 | 昭和22年(1947年)8月19日 |
訪問日 | 令和4年12月12日 |
応対者 | 総務部 藤田博丈部長 |
訪問者 | 副団長1名、危機管理室副参事1名、広報部員2名 |
「企業訪問」とは
この度、枚方市消防団広報部の企画として「企業訪問」を実施する運びとなりました。
企業訪問とは?
「企業訪問」とは、枚方市内に営業・生産(製造)拠点を持つ企業を訪問し、消防団活動への理解を深めていただく一方、企業の防災に関する取組みや自社から発信可能な情報等を市民の皆さまに広く紹介することで、企業と市民、そして周辺地域とを防災の観点から「結ぶ」ことを目的としています。
また、企業と消防団とが連携を強めていくことで、地域防災力の維持・拡充に努めたいとも考えています。勿論、社員さまの消防団への加入促進や活動しやすい環境を整えていただくことについても要請していきたいところです。
記念すべき第1回目の訪問先は、総合防災コンサルティング企業の「初田製作所」です。枚方市に本社を置く老舗消火器メーカーとしても有名で、枚方市民にとっては馴染みのある会社です。今回は、ご多忙の中を総務部 藤田部長さんにご対応いただきました。
訪問日程
開始:10時00分 ~ 終了:12時00分
流れ:訪問挨拶 ⇒ 会社概要の説明 ⇒ 消火体験 ⇒ 展示室見学 ⇒ 質疑応答
1本の消火器の使われ方に思いを馳せて
最初に、藤田部長さんが「私たちは、企業として普段世間から注目されないことが世の中にとっては平和で良いのです。」と言われました。そして「回収された空っぽの消火器を手にした時が私たちの存在意義を確かめる時でもあり、その消火器がどのように使用されたかは分かりませんが、もしその1本で火事・ボヤを防げたとしたら、心嬉しく思うと同時に襟を正す時でもあります。」と言葉を続けられました。
社屋2階展示室入り口にある銅製の『二重瓶消火器』が、ショーケースの中に鎮座して私たちを出迎えてくれました。会社発展の礎となった創業初期の製品で、ひときわその存在感を放っています。そこから年代順に展示された消火器・消火設備を次々と目の当たりにした時、それら機器開発の根底には、1本の消火器の使われ方に思いを馳せて「人命・文化・財産を火災から守る」という信念を持ち続け、製品開発に携わった先人からの弛まぬ努力があったであろうことを想いました。
消火訓練の実地体験
訪問前に予め消火訓練の実地体験を申し出ており、企業概要の説明の後に消火実験室ともいうべき専用の建物へ移動しました。ご指導いただく3名の社員の方が待機しておられ、挨拶をした後に煙を防ぐ高性能のマスクを着用して建物の中に入りました。
最初に担当社員の方に消火方法の手本を見せていただきましたが、燃え上がる炎の勢いも強く、消火範囲も3㎡程ありましたので最初の1本では消すことができませんでした。結局、業務用消火器2本を使用しての消火となりましたが、消火方法にもコツがある(技術が要る)ことを教えていただきました。次に、広報部員が実地の消火訓練に臨みましたが、すぐにコツをつかむのは難しいようで、同じように消火器2本を使っての消火となりました。 2本目を使って消火にあたった担当社員の石割さんは、社内でもトップクラスの消火技術を有する方だそうで、確かにホースを持つ手の動き一つにしても一味違う「キレ」がありました。
地域の方々との共存・共栄
昼間帯に大きな災害が発生した時「社員が地域住民をいかに安全に避難・誘導できるか。そして、逃げた場所での安全確保をどのように実施するかについては、役割を担えるように思います。消火活動は素人には危険であり、自分の身の安全を第一優先にして生命を守ることが大事です。私たちは、地域の方々との共存・共栄だと思っています。」と言われました。有事の際に会社が地域のために動いてくださることは、近隣住民にとっても大変心強いことだと思います。
危機管理室からは、今後大災害の発生を想定した消防署員・消防団員との共同訓練をさせていただきたい旨お伝えしました。
未来志向の会社の支えとは
社内の自衛消防組織として、初期消火チーム、救護等チームを編成して訓練に臨むそうですが、同じ情報が社員全員に行き渡っているかが大事であるとのことです。また、社員は皆さん「消防設備士 乙種第6類」の国家資格を持ち、基本的知識・技術は備えているものの、訓練で特別なことをしているわけではないそうです。世間一般の企業がしていること、決められたことをきっちりできるようになっておくことが大事であるとされました。『肝心な時にこそ普段が出る』ものですが、消火訓練時に的確な説明・指導をされた社員の方々の言動から、平素から優れた教育・訓練を受けておられる印象を受けました。会社の社会課題解決の取り組みとして、体験型消火設備機器の総合研修センター「実消舘」を活用した防災プロの人材養成研修を実施しておられますが、プロを育成するだけの指導者(社員)がいるからできていることにも頷けました。
社是にある、誠実と努力と根気を信条とし、日常業務に向き合う社員の姿勢が、更に良い製品の開発やこれまでにない仕組み・システムを創ることにつながっていきます。その意欲こそが「未来思考」の会社を支えているのではないでしょうか。
ご家庭では2種類の消火器の併用を推奨
初田製作所のホームページに、今日では建材や構造が複雑多様化しており、適材適所設置のためにも粉末〈ABC〉消火器と水系の強化液消火器の併用をお勧めしますとあります。家庭の台所では強化液消火器の使用が有効ですが、電源にかかると二次災害が発生する恐れもあり、粉末タイプの消火器も併設しておくことを推奨されました。市民の皆さま、消防団員の皆さまのご家庭にはどのような消火器を設置しておられますか。ちなみに消火器の使用年数ですが、業務用はおおむね10年、住宅用ならおおむね5年だそうです。これを機会にご確認いただくことをお勧めします。
また、枚方本社ではご家庭から出た古い消火器の引取りも行っています。リサイクルシールのあるなしで有料・無料の別はあるそうですが、お引取りいただけるとのことですのでご案内いたします。
社会・公衆の安全・安心を追求して
訪問時間も残り僅かとなったところで、終始穏やかな口調でお話いただいた藤田部長さんがこのように言われました。
「火の勢いが一気に駆け上がるような火災においては、メーカーでも手を出すことはできません。大切なことは個人レベルでの消火活動で、ご家庭からの火災を一件でも減らすことです。それには高価な装備でなくとも、安価な2種の2本の消火器をご家庭に配備していただくことです。そして、数年に一度買い替えることで安心を買っていただくことができます。保険の延長線上のこととして捉えてみた時、1本数千円の消火器が約10年もち、それでご家庭の安心を買えたとしたら、それがメーカーとして一番嬉しく思うことでもあります。」…と。
どこまでも社会・公衆の安全・安心を追及する、人と人の暮らしに優しい企業でした。
株式会社 初田製作所
社名 | 株式会社 初田製作所 |
代表者名 | 代表取締役社長 初田和弘 |
創業 | 明治35年(1902年)12月1日 |
会社設立 | 昭和22年(1947年)8月19日 |
資本金 | 8千万円 |
従業員 | 740名(2023年1月1日現在) |
事業内容 | 各種消火器、消防設備、自動消火システム、ピット消火システム(YPS)、消火栓、消防用ホース、防災商品の製造・販売、施工、メンテナンス、損害保険代理店業 |